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【中国輸出規制】希土類(レアアース)・デュアルユース品目の影響判断ガイド|日本企業の調達実務

2026-08-11

中国から磁石(マグネット)、モーター、電子部品、特殊合金などを仕入れている日本企業にとって、近年の中国における希土類(レアアース)やデュアルユース(軍民両用)品目ををはじめとする輸出規制の動向は、サプライチェーンの安定性を左右する極めて重要な関心事となっています。

しかし、実務においてまず正しく理解しておくべき「よくある誤解」があります。

【よくある誤解】
「製品にレアアースが含まれているから、もう日本へ輸入(中国から輸出)できない」

結論から言うと、これは誤りです。

中国の輸出管理制度は、単に「レアアースが含まれているか否か」だけで一律に可否を判断するものではありません。「具体的にどの品目・成分・規格が規制対象に該当するか」、排他「最終使用者(エンドユーザー)および最終用途(エンドユース)が規制要件を満たしているか」によって判断されます。

したがって、日本企業の調達担当者が行うべき対応は、「レアアース」という言葉だけで調達を断念することではなく、発注前の段階で必要なチェックポイントを的確に確認・判別することです。

1. まず確認:自社が調達する製品はどの区分に該当するか?

中国のサプライヤーと商談・見積もりを行う際、「レアアース製品」「強力磁石」「希土類合金」といった大まかな商品名(品名)だけで判断してはなりません。必ず具体化された材質スペック・成分規格の開示を求めてください。

【製品カテゴリ別の主な確認事項】

製品カテゴリ 主な確認項目・チェックポイント
希土類金属・酸化物・化合物 具体的な構成元素、および輸出規制品目リストへの該当有無
磁性材料(ネオジム磁石・サマリウムコバルト磁石等) 具体的な材質、添加元素(Dy/Tb等)、寸法・保磁力等の製品規格
パーツ・部品(モーター、センサー等) 内部に使用されている磁体材料の仕様、および製品全体の属性
特殊合金・産業用用設備・機械 含有成分、技術パラメーター、デュアルユース(両用)品目の該当性

例えば、サプライヤーから「これはレアアース磁石です」という説明を受けるだけでは不十分です。日本の調達担当者は、少なくとも「具体的な材質名」「含まれる希土類元素」「詳細な仕様規格」を確認し、SPEC(仕様書)、SDS(安全データシート)、または成分分析資料(Mill Test Certificate等)の提出を依頼する必要があります。

※ HSコード(海関編碼)に関する注意点

HSコードはあくまで通関上の商品分類基準に過ぎず、HSコード単体で輸出規制の対象外であると断定することはできません。 最終的な該当性は、必ず具体的な製品属性、技術パラメータ、および中国現行の「輸出規制リスト(管制目録)」を照合して確認する必要があります。

2. 「輸出規制対象」=「輸出禁止」ではない

仮に調達対象の製品が輸出規制の対象範囲に該当していたとしても、「ただちに日本への輸出が不可能になる」という意味ではありません。

規制対象品目の多くは「許可制(ライセンス制)」によって管理されており、所定の手続きに従って輸出許可証(Export License)を申請・取得することで、正常な取引・出荷が可能です。許可が必要となるか否か、また許可が降りるかどうかは、具体的な製品スペックや取引条件によって判断されます。

そのため、中国サプライヤーに対して:

「この商品は日本へ輸出できますか?」

と曖昧に質問するのではなく、以下のように具体的に確認・指示することが鉄則です。

「この製品は中国の現行の輸出規制品目(両用品目含む)に該当しますか? 該当する場合、日本向け出荷にはどのような輸出許可が必要ですか?」

【重要】2026年1月6日発表の「商務部公告2026年第1号」について

2026年1月6日、中国商務部より《商務部公告2026年第1号》が公布され、日本向けにおけるデュアルユース(軍民両用)品目の輸出管理がさらに強化されました。本公告では、日本の軍事用エンドユーザー、軍事目的用途、および日本の軍事实力向上に寄与する一切の最終使用者・用途向けに対するデュアルユース品目の輸出が明確に禁止されています。

そのため、デュアルユース品目に該当する可能性がある製品の取引では、製品スペックの確認に加え、最終使用者(エンドユーザー)および最終用途(エンドユース)の確認が不可欠となります。

通常のアパレル、家電、一般民生品、自動車などの「民生用(民用)調達」であれば、実際の取引実態に基づき正しく情報(エンドユーザー証明等)を提供し、案件ごとに必要なライセンス手続きを行うことで、法令順守の上で調達を進めることが可能です。

3. 日本企業が発注前(中国サプライヤーへ)に確認すべき5つの項目

量産完了後に「通関できず出荷できない」というトラブルを回避するため、見積もり・サンプル確認の段階で、以下の5項目を中国サプライヤーへ直接打診・確認してください。

  1. 具体的にどのような材質・成分ですか? 該当する希土類元素が含まれていますか?
  2. SPEC(仕様書)、SDS、または成分分析資料を提出できますか?
  3. 本製品は中国の現行の輸出規制品目、またはデュアルユース(両用)品目に該当しますか?
  4. 輸出許可証の申請が必要な場合、貴社(または輸出手配元)に取得実績やノウハウはありますか? 申請にどの程度の期間(リードタイム)が見込まれますか?
  5. 過去に同等・類似製品を日本向けへ正常に輸出した実績がありますか?

4. 磁石・モーター・特殊合金調達における理想的なフロー

トラブルを未然に防ぎ、スムーズな仕入れを実現するための標準プロセスは以下の通りです。

  • [ Step 1 ] 材質・仕様スペックの確定
  • [ Step 2 ] 中国輸出規制への該当性の確認
  • [ Step 3 ] 最終使用者・用途の確認および輸出許可(ライセンス)の要否判断
  • [ Step 4 ] 発注・製造開始(製造後の想定外のトラブルを防止)

製造が完了し、いざ通関・船積みという段階になってから「ライセンスがなく出荷できない」という事態に陥らないよう、「発注前の事前確認」を徹底することが調達リスク管理の要となります。

まとめ

日本企業が中国の希土類・高機能材料における輸出規制の影響を判断する際、本質的なポイントは「製品にレアアースが入っているか否か」ではありません。

  • 具体的に該当する規制品目であるか
  • その取引の最終使用者および用途が規定に適合しているか

この2点を正しく見極めることが重要です。

中国の輸出管理規制は日々アップデートされています。商社や調達パートナー、現地サプライヤーと密に連携し、正しい手順を踏んで情報確認を行うことで、コンプライアンスを遵守した安定的なサプライチェーンを構築・維持することができます。

※参考(公式情報):
中国商務部公告2026年第1号:《关于加强两用物项对日本出口管制的公告》(両用品目の対日本輸出管理強化に関する公告)

(注) 本記事は一般調達・ビジネス情報の提供を目的としたものであり、特定商品や個別取引に関する法的な助言を構成するものではありません。実際の輸出入手続きにあたっては、中国および日本の現行法令・管轄当局による個別の審査結果に従ってください。